臨床ノート 80代男性|姿勢崩壊・起居動作不能から回復力を引き出した症例
① 患者背景
80代男性。
過去は営業職として長年活動されていた。
昨年5月より来院。
食事の際に背筋が伸びず、突っ伏すような姿勢で食事をしている状態を
同居されている息子さんが心配され、来院に至る。
② 主訴・日常生活での制限
- 日常姿勢で背筋が伸びない
- 歩行困難
- 車の乗車・降車が困難
- ベッドから自力で起き上がれない
ADL(基本動作)の多くに介助・工夫を要する状態。
③ 初診時所見と臨床判断
屈筋群全体の拘縮など、
別の病理の存在も疑われる状態ではあったが、
本症例では、
- 腸腰筋をベースとした収縮固定
- それに伴う仙骨の後傾ロック
- 頭蓋骨全体の強い浮腫(むくみ)
が非常に印象的であった。
特に、
治療ベッドへの うつ伏せ・仰向け動作に数分を要する という点から、
局所筋の問題ではなく、
循環・回復力そのものが著しく低下したフェーズにあると判断。
④ 構造的仮説
長期にわたる筋収縮が緩まない背景として、
- マグネシウム不足など
- カルシウムイオンに拮抗するミネラル不足
による
筋収縮が解除されにくい病理状態を疑った。
その結果、
- 腸腰筋収縮
→ 仙骨後傾固定
→ 硬膜牽引ストレス
→ CSF循環低下
→ 頭蓋骨浮腫
という連鎖が成立していた可能性が高い。
⑤ 施術戦略
本症例では、
- 筋肉を単に緩めること
ではなく、
回復力そのものを引き出すことを最優先に設定。
具体的には、
- 腸腰筋をベースに仙骨可動性の回復
- 後頭骨との連動を意識した施術
- 頭蓋骨の浮腫を解消するための
仙骨―後頭骨アプローチを組み合わせる
結果として、
頭蓋骨のむくみが数センチレベルで減少し、
身体全体の反応性が明らかに向上した。
⑥ 改善経過とフェーズ変化
- 初回〜4回目
施術直後に歩行の改善が確認される - 約3ヶ月後
- うつ伏せ・仰向け動作が
数分 → 数秒で可能に - 食事時の姿勢が改善
- ご家族からも明確な変化として認識される
- うつ伏せ・仰向け動作が
- 数ヶ月経過後
活力が向上し、声の張りが出てくる
一方で、
- 約10ヶ月経過時点で改善が頭打ち
- ご本人・ご家族の意向により
施術の「量と質」を落とし、筋肉中心の施術へグレードダウン
その後、
- CSF循環の悪化が再び見られ
- ベッドでの体位変換に
再び1〜2分を要する状態へ戻りつつある
現在は、
息子さんの仕事関係の医療団体でのリハビリを併用されているが、
患者さんの身体状態に対して
有効性が乏しい内容であると感じている。
⑦ 臨床的考察
拘縮を伴う高齢者症例では、
- 「硬い筋肉を緩める」こと自体が目的になると
改善には限界がある - 重要なのは
その拘縮が循環にどのような影響を与えているかを見極めること
循環を回復させる視点でアプローチすれば、
高齢であっても改善は十分に起こり得る。
一方で、
- 施術の質・量を落とす
- 回復力を引き出すアプローチを止める
という選択をすれば、
改善が後退するのもまた事実である。
今回はご家族の意向による選択であり、
それ自体を否定するものではないが、
臨床的には非常に多くの示唆を残す症例であった。
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監修
大阪府池田市 内外整骨院
院長 清水 学(施術歴10年/腸腰筋研究9年/臨床実績6万人以上)
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