筋肉痛について

2025年4月28日 2025年4月26日

seikotsuin

筋肉痛（muscle soreness）は、主に骨格筋に過度な物理的負荷がかかった際に生じる一過性の痛覚反応であり、生理学的には筋損傷と炎症、ならびにそれに続く修復プロセスに関連する複合的な現象です。

筋肉痛には「即発性筋肉痛（acute muscle soreness）」と「遅発性筋肉痛（delayed onset muscle soreness：DOMS）」の2種類があり、特にトレーニングや日常の運動後に発生するのは後者のDOMSです。

一般的とされる筋肉痛は、筋肉に強い伸張性収縮（エキセントリック・コントラクション）が加わった後、

12～24時間以内に発症し、24〜72時間後にピークを迎え、通常は5～7日以内に自然軽快します。

この筋肉痛の主な要因は、筋線維（ミオフィブリル）およびその支持構造（Z線など）における微細損傷に起因します。

その後、マクロファージなどの免疫細胞が損傷部位に浸潤し、サイトカイン（例：インターロイキン-6、TNF-αなど）の分泌によって炎症反応が誘発され、局所に浮腫や疼痛が生じます。

症状としては、局所的な圧痛、運動時痛、可動域制限、筋出力の一時的低下などが見られます。

筋損傷の程度によっては筋力の回復に数日から1週間以上を要する場合もありますが、

病的な損傷（肉離れなど）とは異なり、通常は自然経過で回復します。

DOMSの管理と回復促進のためには、以下の戦略が推奨されます。

軽度の有酸素運動（例：ウォーキング、バイクなど）により筋肉内の血流を促進し、代謝産物の除去と酸素供給を助けます。血流改善は炎症物質のクリアランスを促進し、痛みの緩和に有効とされます。

温熱刺激は血管拡張を誘導し、局所代謝の活性化を助けます。また、温冷交代浴は血流とリンパの流れを交互に刺激し、浮腫や炎症の軽減に寄与する可能性があります。

適度な静的ストレッチやフォームローラーによる筋膜リリースは、筋緊張の緩和と痛覚の調整に貢献することがあります。ただし、過度な圧刺激は損傷部位に悪影響を及ぼす恐れがあるため、慎重な適用が求められます。

筋肉の構造的修復と炎症の制御には、特定の栄養素の補給が極めて重要です。以下に代表的な栄養素を示します：

タンパク質および必須アミノ酸（EAA）
特にロイシンを多く含むEAAは、筋タンパク質合成（MPS）を促進し、損傷筋線維の再生をサポートします。ホエイプロテインなどは吸収も早く有効です。
ビタミンCとビタミンE
これらは抗酸化ビタミンであり、運動による酸化ストレスを軽減し、炎症性サイトカインの産生抑制にも寄与します。特にビタミンCはコラーゲン合成にも関与し、結合組織の回復を助けます。
オメガ-3脂肪酸（EPA・DHA）
抗炎症作用があり、炎症性メディエーターのバランスを整える働きを持ちます。魚油サプリメントや青魚の摂取が効果的です。
マグネシウム・亜鉛・カルシウム
筋収縮と神経伝達に関与し、筋疲労の軽減に役立つミネラル群です。不足すると筋痙攣や慢性的な疲労の原因となることがあります。
ポリフェノール（例：ケルセチン、レスベラトロール）
抗炎症および抗酸化作用を持ち、回復過程における筋損傷軽減効果が示唆されています。