【考察ノート】 なぜ同じ腰痛・痺れでも、改善する人と時間がかかる人がいるのか ― 腸腰筋・大腰筋を起点に見た「回復の分岐点」―
はじめに
腰痛、足の痺れ、歩行困難。
診断名は違えど、臨床で向き合っていると
「構造としてはよく似ている」症例が多いことに気づく。
今回振り返るのは、
- 80代男性|歩行困難・起立時腰痛
- 40代男性|10年来の腰痛+下肢痺れ
- 70代男性|狭窄症・ヘルニア診断後の下肢痛
この3症例を通して見えてきた
改善の分岐点 を整理する。
共通していた構造的特徴
① 診断名と「本当のストレッサー」が一致していない
3症例すべてに共通していたのは、
- 診断名は明確
(骨粗鬆症/狭窄症/ヘルニア) - しかし、
症状を作り続けている起点は別にある
という点。
その起点が
腸腰筋、とくに大腰筋の慢性的収縮・硬結 だった。
② 痛み・痺れが出ている場所は「代償」
- 腰が痛い
- 足が痺れる
- 歩けない
これらはすべて 結果 であり、
身体が必死にバランスを取ろうとした
「代償の表現」
であるケースが多い。
特に、
- 左大腰筋の収縮 → 右下肢症状
- 腰筋の収縮 → 臀筋・下腿筋群の過緊張
など、
症状と起点が一致しない構造 が頻繁に見られた。
改善が早い症例の条件
40代男性・70代男性に共通していた点
- 大腰筋の収縮が 硬結として明確
- 変形はあるが、可逆性が残っている
- 神経症状はあるが、反応が返ってくる
このような症例では、
- 起点(大腰筋)を外す
- 循環(内臓・CSF)を補助する
ことで、
1〜数回で「明確な変化」 が起こる。
患者さん自身が
「今までと違う」と感じる瞬間が早い。
時間がかかる症例の条件
80代男性症例に見られた特徴
- 長期間の大腰筋収縮
- 骨盤後傾が固定化
- 腰椎変形が進行
- 硬膜牽引ストレスが強烈
この状態では、
- 神経
- 循環
- 回復力
すべてが 低下フェーズ に入っている。
そのため、
「一回で良くなる」
という期待には応えられない
しかしこれは
改善しない という意味ではない。
回復の本質は「時間軸」にある
骨・筋・神経には
それぞれ回復のスピードがある。
- 筋・循環:比較的早い
- 神経:中等度
- 骨・構造:時間がかかる
80代症例では、
- 一気に変えようとしない
- 皮膚反射や循環反応を使い
- 回復力そのものを呼び戻す
という戦略が必要になる。
大腰筋は「症状の原因」ではなく「ストレッサー」
ここで重要なのは、
大腰筋が悪者なのではない
という点。
大腰筋は、
- 崩れた構造を支え
- 立てなくなった身体を
- 最後まで守ろうとする筋肉
とも言える。
だからこそ、
- 長期間、収縮を強いられ
- 硬結として残り
- 次の代償(ヘルニア・狭窄)を生む
内外整骨院が大切にしている視点
- 痛い所を追わない
- 画像だけで判断しない
- 「どこが耐え続けているか」を見る
腸腰筋・仙骨・脊髄硬膜・CSF。
この連動を外すことで、
- 年齢に関係なく
- 診断名に振り回されず
「治ろうとする力」が戻る
それが、
これまでの臨床で一貫して確認できている事実だ。
予告(院長臨床ノートとして)
今後、
- なぜマッサージで悪化する人がいるのか
- なぜ「触られていない筋肉」が回復を左右するのか
《大腰筋の硬結が見つかる瞬間》
について、もう少し踏み込んで書いてみたい。

