今日の臨床ノート 70代男性|足の痺れと股関節から下肢への痛み ―「画像診断」と「実際のストレッサー」が一致しない典型例―
主訴・来院背景
70代男性。
主訴は 足の痺れと、股関節から足にかけての痛み。
これまでに
- 脊柱管狭窄症
- 腰椎椎間板ヘルニア
と診断されており、
仕事場の近くにあるカイロプラクティックにて
マッサージと鍼治療を4回 受けたものの、
ご本人としては 「変化を感じられなかった」 とのこと。
「年齢的にも仕方がないのかもしれない」
そう感じつつも、改善の可能性を求めて当院に来院された。
印象に残った所見
初診時、最も強く印象に残ったのは
左大腰筋・L3レベル付近の明確な収縮(硬結)。
- 表層の筋緊張ではない
- 指が沈まないほどの深部硬結
- 触れた瞬間に「ここがストレッサーだ」と感じる反応
一方で、
症状として強く出ているのは 右下肢の機能低下・痺れ。
この
「収縮は左、症状は右」
というねじれが、今回の症例の鍵だと考えた。
その場で立てた仮説
この症例を以下のように捉えた。
- 左大腰筋L3付近の慢性的収縮
- それにより骨盤〜腰椎のバランスが崩れる
- 代償として 反対側(右)に椎間板へのストレスが集中
- 結果として
- 右側にヘルニア所見
- 右下肢の痺れ・機能低下
つまり、
画像上の「ヘルニア」そのものが原因ではなく、
それを生み出しているストレッサーは左大腰筋の硬結である
という構造。
このタイプは
狭窄症・ヘルニア・すべり症と診断された方の中に
一定数、確実に存在する。
実際のアプローチ
① 起点への集中アプローチ
- 左大腰筋L3レベルの硬結へ
徹底的かつ段階的にアプローチ - 単なる「緩め」ではなく
反応が変わるまで触れ続ける
② 循環面からのサポート
- 大腰筋と関連の深い 腎臓の循環 に着目
- 内臓循環を促すことで
大腰筋が再収縮しにくい状態を作る
③ 全体バランスの再構築
- 大腰筋の緊張が抜けた後に
体全体の負荷がどう再配分されるかを確認 - 無理な矯正は行わず、反応重視
施術後の変化
施術後、患者さん自身がすぐに変化を実感。
- 足の痺れが明確に軽減
- 歩行が軽くなった感覚
- 階段の昇り降りが楽になった
「さっきまでと、明らかに違う」
この言葉が、今回のアプローチが
的を射ていたことを示している。
この症例から得られた臨床的確信
この症例を通して、改めて強く感じたことがある。
- ヘルニア
- 脊柱管狭窄症
- すべり症
と診断され、
明確な症状を抱えている方の中に、
大腰筋の硬結が“真のストレッサー”になっているケースが確実に存在する
という事実。
そして、
この硬結を見つけ、解消できた時、
改善は想像以上に早く起こる
硬結を見つけた瞬間、
正直に言えば「嬉しくなる」。
それは
改善の道筋が見えた瞬間でもあるからだ。
世の中にまだ共有されていない視点
もし、これまで4回施術を受けてきた治療院が
この大腰筋の硬結に触れていなかったとしたら、
そこにアプローチするだけで
改善はさらに進む可能性が高い。
- 見えている構造
- 触りやすい場所
ではなく、
「症状を生み続けている深層のストレッサー」
ここに目を向けられるかどうか。
それが、
変化を感じられる施術と
感じられない施術の分かれ目だと考えている。

